【景表法】知らないと危険!? 「不実証広広告」と「二重価格表示」

昨今の景品表示法違反事例では、優良誤認表示における不実証広告規制違反と、有利誤認表示における二重価格表示規制違反が増加傾向にあります。ここでは、その2点についての説明をしていきます。

目次

「優良誤認表示」と「不実証広告規制ルール」

景品表示法では、優良誤認表示の規制の中に、「不実証広告」の規制ルール(第7条2)という非常に重要な内容が含まれています。

措置命令 (第7条)
2.
内閣総理大臣は、前項の規定による命令に関し、事業者がした表示が第五条第一号に該当するか否かを判断するため必要があると認めるときは、当該表示をした事業者に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。この場合において、当該事業者が当該資料を提出しないときは、同項の規定の適用については、当該表示は同号に該当する表示とみなす。

この「措置命令(第7条2)」のルールは、

消費者庁は事業者に対して、商品・サービスについて、その広告や宣伝、パッケージや容器等の製品への記載された内容に関して、その効果効能や性能の根拠資料の提出を求めることができる

という内容です。
また、消費者庁から根拠資料の提出を求められた事業者は、15日以内に資料を提出しなければならず、それができない場合は「優良誤認表示」と判断されてしまいます。
さらに、その資料は資料提出が求められてからのエビデンス取得は認められず、予め用意され検証されていたエビデンスでなければならないという、非常に厳しいルールです。
もちろん、仮に15日以内に、事前に用意があった根拠資料としてのエビデンスデータを提出できたとしても、消費者庁がそれを「十分な根拠としてのエビデンスデータ」と判断しなかった場合も「優良誤認表示」としての判断となります。
そして、優良誤認表示と判断されてしまった場合は措置命令と共にペナルティとしての課徴金納付命令が下されてしまうという…非常に恐ろしいルールです。
ここ数年、数多くの大手企業が、この不実証広告規制ルールによる指摘を受け、高額な課徴金納付命令を下されている状況もあり、広告制作サイドは慎重に内容を検討しなければいけません。

「有利誤認表示」と「二重価格表示規制ルール」

有利誤認表示の規制の中には、「二重価格表示」の規制ルールという非常に重要な内容が含まれています。
広告や店頭で行なわれる「通常時価格5,000円を、今なら3,500円!」というようなセール表示を二重価格表示といい、その時点での販売価格とは別に、参考となる別の価格(比較対照価格)を同時に表示するケースのことです。
この例であると、
「通常価格5,000円」の表示→比較対照価格
「今なら3,500円」の表示→販売価格
となり、比較対照価格を表示することで、現在購入することが「お得だ!」と思わせる様な安さを強調する表示が二重価格表示に該当し、景品表示法では、それに対しての規制ルールがあります。

二重価格表示の例

二重価格表示のルールは、消費者庁のガイドライン「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」に次の5つの軸に沿って規制が書かれています。

1.不当な二重価格表示
2.過去の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示
3.将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示
4.希望小売価格を比較対照価格とする二重価格表示
5.競争事業者の販売価格を価格対照価格とする二重価格表示

特に2~4の項目は、違反事例も多く、十分に注意する必要のあるルールです。

「不当な二重価格表示」とは

次のような二重価格表示は不当表示に該当するおそれがあります。

  • 同一ではない商品の価格を比較対照価格に用いて表示を行う場合
  • 比較対照価格に用いる価格について実際と異なる表示やあいまいな表示を行う場合

比較対照価格に用いるものが、異なる商品であったり、同等の価値の無い中古品であったりする場合は違反となります。
また、比較対照価格が「いつ」「どこで」「誰が」販売してした価格なのか、根拠のない曖昧な価格である場合も違反となります。
ただ何となく「以前はこれくらいの価格で販売していたから…」という理由で表示するのは絶対にNGですので注意が必要です。

「過去の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示」とは

いわゆる「8週間ルール」と呼ばれる表示の規制ルールです。
セール価格表示で、過去の販売価格を比較対照価格に使用する場合の根拠について、消費者庁では次のガイドラインを示しています。

  • 同一の商品について「最近相当期間にわたって販売されていた価格」を比較対照価格とする場合には、不当表示に該当しにない
  • 同一の商品について「最近相当期間にわたって販売されていた価格」とはいえない価格を比較対照価格に用いる場合には、当該価格がいつの時点でどの程度の期間販売されていた価格であるかなどその内容を正確に表示しない限り、不当表示に該当するおそれがある

二重価格表示における「最近相当期間にわたって販売されていた価格」とは

この「最近相当期間にわたって販売されていた価格」が「8週間ルール」の出所となり、最近相当期間については、次の3つの視点から判断がされます。

1.比較対照価格はセール開始日から、過去8週間の過半を占める期間(4週間以上)で販売していた価格かどうか

セール開始日から8週間遡り、そのうちの4週間以上で比較対照価格での販売実績がある場合は「最近相当期間にわたって販売されていた価格」として認められます。
ちなみに、その商品・サービスが発売からから8週間未満のときは、販売期間の過半かつ2週間以上の販売実績があれば、比較対照価格として表示することができます。

2.セール開始日が比較対象価格で販売した最終日から2週間以上経過していないかどうか

セール開始日が、比較対照価格で販売した最後の日から、2週間以上経過している場合は「最近相当期間にわたって販売されていた価格」として認められません。

3.比較対照価格での販売期間が2週間以上あるかどうか

比較対照価格で販売していた期間が2週間未満である場合は、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」として認められません。

以上の条件を満たすかどうかを、しっかりと確認した上で二重価格表示でのセールを行なう必要があります。

「将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示」とは

将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示とは、TV通販でよく見かける「今日だけ限定5,000円!明日からは10,000円」というような場合のことをいいます。
これについて、消費者庁でのガイドランでは

「将来の価格として表示された価格で販売することが確実な場合以外においては、将来の販売価格を用いた二重価格表示を行うことはあまり適切ではない」

とされています。「将来」についての具体的な期間は明示されておらず、

ごく短期間でのみ当該価格で販売するにすぎない時
表示された将来の販売価格が十分な根拠のある場合ではない時

上記の場合は「将来」とはしないと記載があるだけです。
ですので、セール価格での販売期間と、比較対照価格での販売期間のバランスから判断される内容になりますので、やや曖昧なルールである分、注意が必要です。

「希望小売価格を比較対照価格とする二重価格表示」とは

希望小売価格とは、いわゆる「メーカー希望小売価格」のことで、製造側のメーカーが、販売店等の小売業側に対して、販売価格の希望や目安を示したものです。
一般的に「定価」と呼ばれるものです。
ちなみに、メーカー希望小売価格が無く、販売側が価格を決めて売ることを「オープン価格」と呼びます。

この希望小売価格は、消費者庁のガイドラインで、次の条件を満たす必要があると示されています。

  • 製造業者、卸売業者、輸入総代理店等の、小売業者以外の者が、自己の供給する商品について希望小売価格を設定していること
  • 製造業者、卸売業者、輸入総代理店等が設定した価格で、カタログ、パンプレット等で公表されている価格であること

「競争事業者の販売価格を価格対照価格とする二重価格表示」とは

競争事業者の販売価格を価格対照価格とする二重価格表示について、消費者庁のでは次のガイドラインを示しています

  • 消費者が同一の商品について代替的に購入し得る事業者の最近時の販売価格とはいえない価格を比較対照価格に用いる場合には、不当表示に該当するおそれがある
  • 市価を比較対照価格とする二重価格表示については、競争関係にある相当数の事業者の実際の販売価格を正確に調査することなく表示する場合には、不当表示に該当するおそれがある

市場価格(市価)や、競合他社の販売価格を比較対照価格とする場合は、正確な調査を行なってその根拠とする必要があります。
商圏や価格の根拠となる調査対照の母数ばど、客観的で合理的なデータが必要となりますので、安易に用いることのできない方法です。

以上の、不実証広告規制ルール、二重価格表示規制ルールを十分に理解し、販売側は違反のないように効果的な広告宣伝をおこなっていく必要があります!

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